逃げる

逃げる

状況はとても緊迫していた。広くて暗いビルの中。とにかく速く逃げないと…捕まったら大変なことになる。鼓動が速くなるにつれ、それに追いつくように息もどんどん上がる。 銃を持って立っている男が遠くの方に見える。その男が歩く度に抱えている銃が鈍く光るのが何十メートルも離れたここからでも見える。

慎重に注意深く階段を降りて行けば大丈夫。私のいる部屋は階段に近い。 そう何度も言い聞かせた。

でも、そう、一緒に逃げているあの子が、まどろっこしい! 悪い子じゃないってことは分かるのだけれど。 とろくて、すぐメソメソするのも困る。 そんなことを考えていると耳元で声がした。 「あんたいつも、そう…。思っていることを口に出さないで我慢しているでしょ。いい子ぶって!はっきり、言った方がいいよ、その子に。『あんたが足手まといなんだよ!』って。」 (そんなこと、言える?でも、そうだよね。言わなくちゃいけない時だってあるよ。) 大声で叫んでいた。 「ね!足手まといなんだよ!お願い!もう、ついて来ないで!」

振り向いたその子を見て、身体が震えた。 泣きそうな顔をして振り向いたのは、 小学生の私だった。

…とそこで、目が覚めた。 涙がいっぺんに溢れた。


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